トラネキサム酸は、シミの原因となるメラニンを産生する色素細胞の活性化を抑える働きがああり、肝斑やそばかす、老人性色素斑などのシミに対して使われることのある治療薬です。
トラネキサム酸が配合されている薬には、トランサミンなどがあります。
トラネキサム酸は、美白効果のある治療薬の中でも、比較的安全に使えるといわれています。
しかし、人によってはアレルギー反応や下痢、腹痛などの副作用が起こる場合があります。
今回は、トラネキサム酸の副作用と対策について、わかりやすく解説いたします。
トラネキサム酸の副作用
トラネキサム酸は、ハイドロキノンのような美白剤に比べて副作用が少なく、比較的安全に使えるといわれています。
しかし、副作用が起こる場合もあるので、使用前にどのような副作用が起こるか理解しておくことが大切です。
胃腸障害
胃腸障害とは、消化に関わる胃や腸に異常が起こることです。
具体的には、トラネキサム酸を使用してから、下痢や腹痛などの副作用が起こる場合があります。
トラネキサム酸の副作用の中で、胃腸障害の割合は多いといます。
副作用として胃腸障害が起こったとしても、軽度で、特別な処置などは必要とせず軽快することが多いです。
肝機能異常
トラネキサム酸だけでなく、多くの薬の副作用として肝機能異常が起こることはよく知られています。
血液検査で肝酵素などの数値が正常値より上昇すると、肝機能異常と判断します。
トラネキサム酸の副作用で肝機能異常が起こったとしても、軽度で、特別な処置も必要なく改善することが多いです。
白血球数増加
トラネキサム酸の副作用として、服用後に血液中の白血球の数が増える場合があります。
血液検査をすると、白血球が増えていることを確認できます。
ただ、トラネキサム酸の服用後に白血球数が増加したとしても、軽度で特別な処置など必要なく改善することが多いといわれています。
血栓
血栓とは、血管の中に血のかたまりができることです。
トラネキサム酸の副作用として血栓はまれと言われていますが、もし起こった場合には重症になる可能性もあります。
血栓が起こりやすい年齢と考えられている55歳以上の方は、トラネキサム酸の使用前には医師に相談することとなっています。
トラネキサム酸の副作用 経血量の変化
トラネキサム酸には止血作用もあるため、生理中の経血量に変化が出ることがあります。
トラネキサム酸を服用している55名に対して、生理中の経血量を調べた研究によると、94%で異常は認めなかったものの、4%に経血量の減少、2%に経血量の不安定が見られたそうです。
トラネキサム酸の副作用に対する4つの対策
使用前に医師に相談する
トラネキサム酸は市販薬でも手に入れることができますが、使用前に医師に相談しておくと皮膚や身体に異常が起こった時でも安心です。
かかりつけ医がある場合には、事前に相談してみましょう。
服用量を調整する
今までの多くの研究によると、肝斑や老人性色素斑などのシミに対してトラネキサム酸を1日750~1500㎎内服すると、2~3ヶ月後には改善することがわかっています。
しかし、服用量が多いと副作用が起こる可能性が高くなる場合があります。
つまり、初期量の750㎎に留めておくと、副作用が少ないかもしれません。
異常を感じたら、すぐに使用をやめる
トラネキサム酸を使用後に、皮膚や身体に異常を感じたらすぐに使用をやめるようにしましょう。
使用を中止し、担当医や薬剤師に相談するようにしてください。
他の美白剤を検討する
美白剤には、ハイドロキノン、アゼライン酸、アルブチン、コウジ酸、ルシノール、ビタミンCなど、さまざまなものがあります。
トラネキサム酸が合わない場合には、他の美白剤を検討してもよいかもしれません。
トラネキサム酸の使用に注意すべき方とは?
55歳以上の方
トラネキサム酸の副作用として、まれではあるものの、血栓を生じることがあります。
そのため、血栓を生じやすい年齢と考えられる55歳以上の方が、トラネキサム酸を使用する場合には注意が必要とされています。
55歳以上の方は、トラネキサム酸を使用する前に医師に相談するようにしましょう。
また、トラネキサム酸を含む市販薬であるトランシーノは、50歳以上への一般薬としての販売は禁止されています。
トロンビンを服用している方
止血作用のあるトロンビンを服用している場合には、トラネキサム酸を併用してはいけません。
トロンビンとトラネキサム酸を同時に服用すると、血栓ができる可能性が高くなるからです。
持病がある方
何らかの持病があり、服用している薬がある場合には、トラネキサム酸を服用してよいか担当医に相談するようにしましょう。
まとめ
トラネキサム酸は、美白剤の中でも比較的安全に使用できるといわれていますが、副作用が全く起こらないわけではありません。
トラネキサム酸の副作用としては、下痢、腹痛、肝機能異常、血栓などがあります。
まれではあるものの、トラネキサム酸の副作用による血栓は重症化する可能性もあるので注意が必要です。
55歳以上の方や持病のある方は、トラネキサム酸を服用する前に担当医に相談しましょう。
もし、トラネキサム酸を服用後に皮膚や身体に異常が起こったら、使用を中止してください。
参考文献
日本医事新報 4625:60, 2012.
新薬と臨床 61(10):89-92, 2012.