ケミカルピーリングは、皮膚の再生を促す治療法でシミやニキビ、小ジワなどに効果を期待できます。
医療機関だけでなく、市販品を購入して自宅でも行うことのできる治療法です。
ただし、ケミカルピーリングに対する正しい知識や効果を高めるポイント、注意点などを治療前に理解しておかないと、思うような効果を得られない場合もあります。
ここでは、ケミカルピーリングの種類や効果、ケミカルピーリングが向いている皮膚の症状、医療機関でのケミカルピーリングの手順、自宅用のお勧め製品などについてわかりやすく解説します。
目次
ケミカルピーリングとは
ケミカルピーリングは、酸を含む薬剤を皮膚に塗り、再生を促すことでシミやニキビ、小ジワなどを改善する治療法です。
ケミカルピーリングの歴史
酸を使用すると皮膚がきれいになることは、古くから知られていました。
例えば、古代エジプトではクレオパトラが乳酸を含むサワーミルクを風呂に入れて美肌を維持しようとしたといわれています。
また、中世のフランスでは貴族が酒石酸を含むワインを顔に塗って、皮膚をきれいにしていたそうです。
このように、古くから、ケミカルピーリングの原理と同じように、酸を使用すれば皮膚がきれいになることが知られており、実践されていました。
ケミカルピーリングが効果を発揮するメカニズム
皮膚は定期的に、古い細胞と新しい細胞が入れ替わっています。
古くなった細胞がはがれ、新しい細胞に替わることをターンオーバーと呼びます。
ターンオーバーがうまくいかないと、ニキビやシワ、シミなどの皮膚トラブルの原因になります。
ケミカルピーリングでは、酸を含んだ薬剤を皮膚に塗ると、皮膚がやわらかくなり、はがれ落ちます。
皮膚がはがれ落ちると、ターンオーバーが促されるので、皮膚トラブルが改善し、美肌効果を期待できます。
また、ケミカルピーリングによって肌のハリも取り戻せるといわれています。
ケミカルピーリングの治療手順
医療機関で行われるケミカルピーリングの治療手順を紹介します。
医療機関で行われるケミカルピーリングと異なり、自宅で行う場合には、中和や冷却は必要ないことが多いです。
自宅で使用できるケミカルピーリング製品は、医療機関で使用する薬剤よりも弱いものが多いからです。
STEP1. 洗顔
まず皮膚を清潔にするために顔を洗います。
皮脂の分泌が多い場合には、エタノールなどの薬剤を使って皮脂を除去します。
STEP2.ピーリング剤の塗布
目を閉じて仰向けになり、顔にピーリング剤を塗ります。
ピーリング剤としてよく使われるものは、グリコール酸、乳酸、サリチル酸などです。
ピーリング剤を塗ると皮膚の反応が始まるので、長く作用させたい部分に先に塗ることがあります。
皮膚にピーリング剤を塗る時間は約15~20秒で、皮膚と反応させる時間は数分のことが多いです。
皮膚と反応させる時間は、薬剤の濃度によって異なります。
もし、ピーリング剤を塗ってから強い赤みや痛みが出たら、ピーリング剤の反応を止める場合があります。
STEP3.ピーリング剤の除去
ピーリング剤を反応させた後は、顔を洗い、ピーリング剤を除去します。
中和剤を使用する場合もあります。
STEP4.冷却
ピーリングした後の肌は敏感になっているので、十分に冷やすことが大切です。
軽度の赤みであれば問題ないですが、水泡になっていたり、むくんでいたりする場合にはかさぶたになる可能性があります。
ただし、適切な治療を行えば、ほとんどの場合は時間の経過とともに改善していきます。
STEP5. 保湿
皮膚の状態を確認した後に、保湿剤やビタミンCローションなどを塗ります。
ケミカルピーリングの費用
ケミカルピーリングは保険適応外です。
クリニックなどの医療機関でケミカルピーリングを行う場合には、約1~3万円のことが多いです。
ただし、ケミカルピーリングの後にイオン導入などを行い、セット料金となっていることもあります。
事前に費用を確認しておくと安心です。
ケミカルピーリングの効果を期待できる皮膚の症状
ケミカルピーリングでは、古くなった皮膚が取り除かれ、再生が促されるので皮膚トラブルが改善します。
具体的には、ニキビやシミ、小ジワに効果があるといわれています。
また、ケミカルピーリングは脂漏性角化症、日光角化症、疣贅(ゆうぜい)などにも適応があります。
ニキビやシミ、小ジワの場合には、皮膚の浅い層までのピーリングで効果を期待できますが、脂漏性角化症、日光角化症、疣贅(ゆうぜい)の場合にはより深い層までのピーリングをする必要があります。
ここでは、美容目的のケミカルピーリングで効果を期待できるニキビやシミ、シワについて解説します。
ニキビ
ピーリングによって角質を除去すると、ニキビの原因になる毛穴のつまりが改善されます。
また、ピーリング剤に含まれる酸によってニキビの原因となる菌が殺菌されます。
このように、ケミカルピーリングはニキビのある方に良い適応となります。
ニキビの跡で皮膚が黒ずんでいる場合にも、ケミカルピーリングによる改善が期待できます。
ニキビに対する治療期間の目安ですが、2週間ごとに最低3か月は行った方がよいです。
ニキビの跡で、皮膚に陥凹がある場合にはピーリングを繰り返し行うと改善されることはあるものの、完全に元の状態に戻すのは難しいといわれています。
シミ
紫外線や皮膚のターンオーバーの遅れなどが、シミの原因になります。
ケミカルピーリングで皮膚のターンオーバーを促進すれば、シミの原因を除去することができます。
シミに対する治療期間ですが、医師の指示に従い数か月は継続的に行う必要があります。
ひとことでシミといっても、さまざまな種類があるので、治療前に医師の診断を受けた方が安心です。
老人性色素斑(日光によるシミ)
日光によってできるシミで、小さいものは浅めのピーリング、大きいものは深めのピーリングで治療します。ただし、炎症後色素沈着のリスクもあるので無理をせずに治療を進めることが大切です。
肝斑
紫外線や女性ホルモンなどによってできるシミで、ケミカルピーリングだけでなくハイドロキノンなどの美白剤を併用するとよいと考えられています。
そばかす(雀卵斑)
そばかすは遺伝性があり、紫外線で悪化する傾向があります。ケミカルピーリングをすると、そばかすの色調が薄くなる効果を期待できます。
炎症後色素沈着
やけどやニキビ跡、摩擦などによる皮膚の黒ずみを炎症後色素沈着と呼びます。
特に治療しなくても半年程度で改善することが多いですが、ケミカルピーリングやハイドロキノンなどの美白剤による治療を行うと早期の改善を期待できます。ただし、強い治療を行ってしまうと、かえって炎症が起き、色素沈着が濃くなることがあるので注意が必要です。
小ジワ
ケミカルピーリングでは、皮膚のターンオーバーが促進されるので、小ジワに対する効果を期待できます。
ただし、大きなシワや深いシワは皮膚の深い部分の変化による症状なので、ケミカルピーリングでは治療が難しいです。
皮膚の浅い部分で起きている小ジワの場合には、ケミカルピーリングによる効果があります。
自宅で行えるお勧めのケミカルピーリング製品
ケミカルピーリングは、クリニックなどの医療機関だけでなく、自宅でも行うことができます。
ただ、市販品を購入する場合には注意すべきこともあります。
市販のケミカルピーリング製品の注意点
市販品は、ケミカルピーリング製品となっていても、実際にはピーリング成分が微量しか入っていないこともあります。
ピーリング成分が微量しか含まれていないと、副作用が起こりづらいですが、効果もあまり期待できない場合があるので注意が必要です。
また、低濃度だとしても、使用期間が長かったり、頻繁に使ったりすると乾燥や小ジワなどの副作用が起こる可能性もあります。
市販品でおすすめはスキンピールバー
市販品でおすすめのケミカルピーリング製品は、スキンピールバーと呼ばれる石けんです。
自宅でも問題なくピーリングできるように、皮膚に刺激の少ない酸が配合されているのが特徴です。
スキンピールバーを使用し、自宅で洗顔するだけでピーリングできます。
スキンピールバーの泡で、週に2回2分程度パックを行うとより効果的です。
ただし、使いすぎると乾燥や小ジワなどの原因になることがあります。
そのため、1か月ごとに医師の診察を受けるなど、適切な指導のもとで使用した方が安心です。
費用は135gで、約2000~5000円です。
お試し用もあるので、試しに使用してから購入を検討してもよいかもしれません。
おすすめしない市販品
市販品で、ピーリングジェルと呼ばれる化粧品があります。
皮膚にジェルを塗り、こするとポロポロとカスのようなものが出てくる化粧品のことです。
ピーリングといっているものの、わずかに皮膚の汚れが取れる程度の効果しかないのでおすすめできません。
また、皮膚をこすることによって色素沈着や肝斑の悪化などのリスクもあるので要注意です。
医療機関で行うケミカルピーリング
ひとことで医療機関で行うピーリングといっても、ピーリングする皮膚の深さや使用するピーリング製剤によって内容が異なります。
医療機関で行うケミカルピーリングへの理解を深めるために、詳細を解説します。
ケミカルピーリングの深さの種類
皮膚は、表面から角層、表皮顆粒層、基底層、真皮乳頭層、網状層で構成されています。
クリニックなどの医療機関で行われるケミカルピーリングは、皮膚のどの層までピーリングするかによって4段階に分けられます。
深さが角層までの場合には最浅層ピーリング、表皮顆粒層や基底層まで達する場合には浅層ピーリング、真皮乳頭層まで達する場合には中間層ピーリング、網状層まで達する場合には深層ピーリングと呼びます。
例えば、シミやニキビ、シワに対するピーリングでは、最も浅い角層までのことが多いです。
ピーリング製剤の種類と特徴
医療機関では、強いピーリングを行うことも可能ですが、副作用が起こるリスクも高くなります。
医療機関で使用される一般的なピーリング製剤としては、グリコール酸やサリチル酸、トリクロロ酢酸、乳酸などが挙げられます。
それぞれのピーリング製剤の特徴や適応、注意点などについてまとめると以下のようになります。
グリコール酸
グリコール酸は、浅層ピーリングの時に使用されます。
皮膚の代謝亢進やハリの増加などの効果を期待できます。
水溶性で皮膚に浸透しやすいという特徴があります。
ニキビやシミ、小ジワなどに適応があります。
注意点としては、高濃度で浮腫やびらん、かさぶたのリスクがあります。
サリチル酸
サリチル酸は、最浅層ピーリングの時に使用されます。
皮膚の代謝亢進やハリの増加などの効果を期待できます。
脂溶性で、グリコール酸に比べると深達度が深いといわれています。
ニキビやシミ、小ジワなどに適応があります。
注意点としては、血液中に吸収されるとサリチル酸中毒の危険があります。
トリクロロ酢酸
トリクロロ酢酸は、中間層ピーリングの時に使用されます。
皮膚の細胞の活性化、コラーゲン産生促進などの効果があります。
蛋白変性や凝固壊死を引き起こします。
陥凹のあるニキビ跡やシミに適応があります。
注意点としては、適切に使用しないと傷跡が残る可能性があります。
乳酸
乳酸は、最浅層ピーリングの時に使用されます。
保湿効果が高く、皮膚の弾力性の増加やメラニン生成の抑制などの効果も期待できます。
難治性のニキビに適応があります。
注意点としては、浮腫やびらん、かさぶた、色素沈着の可能性があります。
ケミカルピーリングの効果を高めるためのポイント4つ
ケミカルピーリングは、シミやシワ、ニキビ跡などに効果を期待できる治療法ですが、さらに効果を高めるためのポイントを4つ挙げます。
保湿をする
ケミカルピーリングでは、皮膚を乾燥から守る角質層も一緒にはがしてしまうので、一時的に皮膚が乾燥しやすくなります。
皮膚が乾燥は、小ジワの原因になるので要注意です。
十分な保湿を心がければ、ケミカルピーリングの効果が高まります。
紫外線を予防する
ケミカルピーリングによってはがされる角質層は、紫外線などに対するバリア機能もあります。
角質層が再生する前に紫外線を浴びてしまうと、シミやシワの原因になります。
ケミカルピーリングをした後は、紫外線を浴びないように心がけましょう。
紫外線の強い日中の外出はなるべく避け、日傘や帽子、サングラスなどを使用してみると紫外線の予防になります。
肌質や肌の状態に合ったピーリング剤を選ぶ
ケミカルピーリング剤にはいくつかの種類があり、性質も異なります。
肌質や皮膚の症状に合わせて、自分に合うピーリング剤を選ぶ必要があります。
同じ製品の中でも、濃度設定や酸性度が異なり、効果や副作用に違いがあります。
治療を始める前に、医師とよく相談することが大切です。
他の治療法と組み合わせる
ケミカルピーリングをした後に、トレチノインやハイドロキノンなどの美白剤を使用すると、より高い美肌・美白効果を期待できます。
ケミカルピーリングによって角質が除去されるので、トレチノインやハイドロキノンなどの薬剤が浸透しやすくなるからです。
トレチノインは皮膚の代謝を高め、ハイドロキノンはシミの原因となるメラニンの生成を抑えます。
ただし、トレチノインによりターンオーバーが高まったところにピーリングを行うと、両者の副作用も出やすくなるので、注意が必要です。
まとめ
ケミカルピーリングは、自宅でも医療機関でも実施できる治療法でシミやニキビ、小ジワなどに効果を期待できます。
よく使用されるピーリング剤として、グリコール酸、サリチル酸、トリクロロ酢酸、乳酸があり、それぞれ適応となる皮膚の症状や特徴、副作用などが異なります。
ケミカルピーリングの効果を高めるためにも、自分の肌質や皮膚の症状に適したピーリング剤を選ぶことが大切なので、医師に相談した方が安心です。
ケミカルピーリングをした後は、一時的に乾燥や日焼けをしやすい状態になるので保湿や紫外線予防を心がけましょう。