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日光アレルギー(紫外線アレルギー・日光過敏症)について

 執筆者: 加治佐 卓也
医学博士・形成外科専門医

日光アレルギー(光線過敏症)とは?

日光を浴びた部位に、痒みを伴う赤みや浮腫みなどの、異常反応が生じることをいいます。

日光を浴びることで生じる急性変化(日焼け)や慢性変化(肌のシミ、たるみなどの光老化や皮膚癌)は、肌質や生活習慣、遺伝など個人差があります。

しかし、これらは日光アレルギーとはいいません。

日光アレルギーは、限られた人に発症します。

特徴

日光アレルギーでは、健康な人であれば問題にならない程度の日光の量で、皮膚異常が起こります。

日光アレルギーで以下のような特徴があります。

  • 外出のたびに異常な日焼けをする。
  • 最近日焼けをしやすくなった。
  • 顔など日光を浴びやすい部位に、皮膚の異常がみられる。

原因は?

日光アレルギー(光線過敏症)の多くは、UVAが原因です。

日光アレルギーは、健康な人であれば赤みを生じないUVAで赤みを生じる状態をいいます。

なお、通常、日焼けによる赤みは、UVBによって起こります。

UVBを浴びた24時間後に赤みが起こる最低限の紫外線量のことを最小紅斑線量(MED)といいます。

日光アレルギー(光線過敏症)では、MEDが健常者よりも短時間で赤みが生じます。

つまり、ちょっとしたUVBでも赤みが起こります。
上記を一言でまとめると、「日光ですぐ赤くなりやすい」ということです。

症状を引き起こす日光の波長

症状を引き起こす日光の波長は、疾患により異なります。

日光アレルギーにおいて、太陽光の波長別に分類すると、以下のような疾患が挙げられます。

赤外線や可視光線・・アトピー性皮膚炎や酒さ
※皮膚の表面温度が高くなり、血行もよくなることで発疹が悪化します。

紫外線・・・膠原病や帯状疱疹、肝斑、乾癬、扁平苔癬など

症状

顔や頭部、耳、手の甲、鎖骨付近など日光を浴びやすい部位に発疹や痒み、痛みなどの皮膚症状がみられます。
なお、直射日光を受けることがない臀部や腹部などには症状は出ません。

また、首や手指も、比較的日光の曝露量が弱いため、皮疹が生じないことも特徴となります。

逆に、頭髪部やアゴ下などに発疹がある場合は、紫外線が原因ではない可能性も考える必要があります。 

季節によって変動があるため、春から夏にかけて症状が出現したり悪化することが多いです。

日光アレルギーの種類

日光アレルギーは以下のタイプに分類されます。

  • 急性
  • 慢性
  • 一過性

また、原因別に分類すると、日光アレルギーには、以下のような疾患が挙げられます。

  • 外因性・・・光接触皮膚炎、薬剤性光線過敏症
  • 内因性・・・多形日光疹、日光蕁麻疹、慢性光線性皮膚炎など
  • 遺伝性・・・色素性乾皮症、コケイン症候群など
  • 代謝異常・・・晩発性皮膚ポルフィリン症、ペラグラ
  • 感染症・・・種痘様水疱症

判別方法

・日光を浴びた部位に発疹が生じた場合に日光アレルギーを疑います。

・発症した年齢や、症状を引き起こす日光の波長の種類によって疾患を絞ることが可能です。

また、薬の使用歴や家族歴も重要となってきます。

検査

  • 光線照射試験(※必須)
  • 光パッチテスト
  • 皮疹誘発試験
  • ポルフィリン体の測定
  • 遺伝子検査

治療

遮光の徹底が基本となります。

日焼け止めの使用やつばの広い帽子、衣類の着用によって物理的に日光を遮断します。

外因性の場合は、原因を特定次第、速やかに原因物質を取り除きます。

幼少期に見られる日光アレルギー(光線過敏)

日光アレルギーによる紅斑がみられる疾患には、色素性乾皮症などの幼児期に発症する疾患と、膠原病などの成人に好発する疾患の大きく2つに分類されます。

ここでは、幼少期と成人期それぞれの時期で好発する疾患について解説します。

◎色素性乾皮症

紫外線によって皮膚に異常をきたすまれな遺伝性の疾患です。

症状としては、幼児期から日光を浴びた部分に水ぶくれを伴う日焼け跡のような紅斑が生じます。

また、顔や背中などにそばかすのようなシミが多発することが特徴です。

健常者であれば、紅斑は、日光を浴びた翌日にピークになりますが、色素性乾皮症の場合は、3日後にピークになることが特徴です。

乳児期より日光アレルギーを起こし、小児期には日の当たる部位に皮膚癌が起こりやすくなります。

その他、角膜炎やドライアイなどの目の症状が見られることもあります。

紫外線対策は、生涯にわたり必要となります。

◎骨髄性プロトポルフィリン症 

色素性乾皮症と同様に、幼児期から日光を浴びた部分に水ぶくれを伴う紅斑が生じる遺伝性の疾患です。

肝機能障害を伴うこともあります。

◎種痘様水疱症 

紫外線を浴びた後に紅斑と水ぶくれが生じる点が前2者と異なります。

また、それがかさぶたになるという特徴があります。

成人期に見られるる日光アレルギー(光線過敏)

◎日光蕁麻疹

日光を浴びてから15分以内に蕁麻疹が生じます。

◎晩発性皮膚ポルフィリン症

C型肝炎の方や、中年以降の男性に多く、アルコールの多量摂取が原因となります。

体内にウロポルフィリンが増加することで日光アレルギーを引き起こします。

紫外線を浴びることで、赤みや水ぶくれやただれ、かさぶたなどがみられます。
その他、日光を浴びた部位にピリピリ感が生じます。

その後は、症状の見られた部位が毛深くなったり、色素沈着を起こすこともあります。

治療法は、C型肝炎の治療および禁酒、遮光、症状に応じた軟膏処方になります。

◎膠原病

成人にみられる日光アレルギーの代表疾患です。

日光アレルギーがみられる代表的な膠原病として知られている全身性エリテマトーデス(SLE)は、診断基準の中にそれが含まれています。

全身性エリテマトーデス(SLE)では、蝶形紅斑が見られます。
これは、紫外線を浴びることで、顔の中央部に赤みがみられることが特徴です。

皮膚筋炎では、上まぶたの浮腫みを伴うヘリオトロープ紅斑が、シェーグレン症候群では、虫刺され様の紅斑や環状紅斑が有名です。 

膠原病による光線過敏についての詳細は、こちらをご覧下さい≫

その他の赤みを症状とする日光アレルギー

薬剤性光線過敏症

薬剤を摂取することで日光アレルギーを引き起こすことがあり、薬剤性光線過敏症と呼ばれます。

薬剤を内服することの多い中高年に多く見られます。

原因

主にUVAの波長によって引き起こされます。

原因となる薬剤はさまざまなものがありますが、頻度が高い薬剤としては、血圧の薬や抗菌薬、抗がん剤、痛み止めなどがあります。
降圧薬を内服している方に特に多く見られます。

単剤から複数の薬効成分が含まれている合剤に変更した場合に、顔に発疹が出ることがあります。

症状

即時型の場合:赤みよりもミミズ腫れのような皮疹や浮腫みが見られます。

遅延型の場合:体幹四肢や顔に紅斑が見られます。

対策

薬剤による日光アレルギーが疑われた場合は、まず薬剤を中止して、皮膚科を受診する必要があります。

光接触皮膚炎

湿布などの薬剤を貼った部位に紫外線が当たることで生じます。

内服薬とは異なり、薬剤を貼った部位に限局して、赤みや水ぶくれ、浮腫みがみられます。

原因として多く挙げられる薬剤には、モーラステープなどの湿布薬があります。

湿布の薬剤は、剥がした後も長期間皮膚の中に浸透し続けます。

そのため、湿布を貼ってから1か月経過してから紫外線を浴びても、湿布を貼っていた部位にくっきりとした皮膚炎が生じることがあります。

その他、日焼け止め製品(特に、日焼け止めのオクトクリレン)に含まれている可能性があります。
そのため、遅発性紅斑が「ひどい日焼け」と勘違いされることがあります。

また、紫外線を浴びる機会が多いと、重症化し、慢性的な潰瘍となり、極めて治療の難しい経過をたどることもあります。

検査・診断

・光パッチテスト、光線照射テスト(原因物質を特定する必要があります)

・顔以外で光を浴びた部位の皮疹の有無を調べます。

・原因物質との接触の有無を調べます。

対策

・原因物質の除去・・・モーラステープなどの原因となる薬剤は中止します。

・紫外線予防

・症状に応じてステロイドやアレルギーの薬を内服します。

慢性光線性皮膚炎(CAD

ほとんどが中高年の男性にみられます。

比較的頻度の高い疾患ですが、はっきりとした原因は分かっていません。

症状

顔や手の甲、首、頭頂部に赤み、ブツブツした発疹が生じます。

長期的に慢性の経過をたどるため、黒っぽい赤みや痒み、皮膚のゴワつきがみられます。

UVAは、薄い衣類も通すため、背中や鎖骨付近、肩などにも赤みが生じます。

ひどい場合は、全身が赤くなる紅皮症となることもあります。

また、日光を浴びてない部位にも発疹が広がることもあります。

治療法

治療は、ステロイドや炎症を抑える薬などを使用します。

軽度の場合はステロイドを使用します。

顔には炎症を抑える軟膏が有効です。

塗り薬は継続的に行うことが重要です。

予防法

できる限り紫外線の強い日の日中の外出を控えることです。

ペラグラ

ペラグラは、ナイアシンというビタミン不足で起こる栄養失調です。

現代の日本では、慢性アルコール中毒できちんと食事を摂らない男性に多くみられます。

日光アレルギーは、顔や手の甲などの紫外線を浴びる部位にみられます。

症状

症状としては、赤みや水ぶくれ、ただれ、かさぶたなどがあります。

湿疹の症状が長期にわたると、慢性化することがあります。

多形日光疹

10~30代の女性に多く、日光を浴びて数時間で赤みや水ぶくれがみられます。

多形日光疹は、日光アレルギーの中で最も頻度の高い疾患です。

女性の約5%にみられます。

日光アレルギーによる赤ら顔の予防方法

紫外線の特長や皮膚への作用を知る

紫外線はUVAとUVB、UVCに分類されます。

UVAは320~400nmの波長を持ち、以下の作用があります。

・メラニン産生を促し、皮膚を黒くします。

・皮膚の弾力が低下し、光老化を促進させます。

UVAは天気が曇りでも、ある程度地表まで到達します。

UVBは、280~320nmの波長を持ちます。
メラニン産生だけでなく、一定の量を浴びることで赤みの原因となります。

UVBは、晴れた日の10時~15時の間が強く、日照時間の長い夏がピークになります。

基本的な紫外線防止

天気予報などから紫外線情報をチェックします。

日傘や帽子を利用した遮光を行い、日中の不要な外出を制限します。

日焼け止めクリームの使用する

紫外線対策で日焼け止めクリームの使用は極めて有効です。

その日の紫外線情報や外出時間などに応じて、それぞれのグレードを考慮したSPF (~最大50)PA(+~++++)の日焼け止めクリームの使用が必要です。

 参考文献

MB Derma. 294. 2020. 

今日の治療指針 2022年版. 医学書院. 2022