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ヒアルロン酸の注意すべき副作用|失明について

ヒアルロン酸は、気軽に治療できる反面、意外と重大な危険性・リスクがあることをご存じでしたか?

ここでは、ヒアルロン酸の危険性・リスクの一つである失明について解説いたします。

頻度は非常に少ないですが、念のため、事前に知っておくことだけでも必要だと考えます。

 

ヒアルロン酸による失明の報告例

ヒアルロン酸注射後に失明した例の報告が国内外であります。

血管内に注入された場合、内頚動脈系の血管に逆行して、短時間のうちに視力を失うことがあります。

以下の論文は、それぞれ2015年1月までおよび2015年1月から2018年9月の間において、ヒアルロン酸や脂肪注入などのフィラー(リフトアップの注入剤)注入後に起こった失明の事例をまとめたものです。
Aesthet Surg J. 2019 May 16;39(6):662-674.
Dermatol Surg. 2015 Oct;41(10):1097-117.

2015年1月までおよび2015年1月から2018年9月の間では、それぞれ98例と48例の症例報告がありました。

2015年1月までの98例の症例報告

・失明が起こった注入部位・・・眉間(38.8%)、鼻部(25.5%)、ほうれい線(13.3%)、および額(12.2%)

・失明を起こした注入物・・・脂肪注入が47.9%の原因を占め、ヒアルロン酸は23.5%でした。

・最も一般的な症状・・・即時的な失明と痛みでした。

失明をきたしたほとんどのケースでは回復は見られませんでした。

2015年1月から2018年9月までの48例の症例報告

・失明が起こった注入部位・・・鼻部(56.3%)、眉間(27.1%)、額(18.8%)、ほうれい線(14.6%)

・失明を起こした注入物・・・98例のうち81.3%がヒアルロン酸によるものでした。

・最も一般的な症状・・・失明以外に、痛み、外眼筋麻痺、および眼瞼下垂が最も多く見られています。
皮膚の壊死は43.8%で報告されています。

視力が完全に回復したのは、10例(20.8%)に留まり、8例(16.7%)は部分的にしか回復しませんでした。

 

ヒアルロン酸注入により失明が起こる理由

失明が起こる理由は、皮膚の外頸動脈系の血管と視神経を栄養する内頸動脈系の血管は目の周囲で吻合しているためです。

以下のように、顔には血管が豊富で、ネットワークを形成しています。

目から離れた部位の注入でも(例えばほうれい線などでも)、血管が詰まることにより皮膚壊死や失明は起こり得ます。

顔面の血管

ほうれい線の少し上の方(頭側)では、「顔面動脈」という比較的太めの血管が走っています。

失明が起こるタイミングと前兆とは?

失明が起こるとしたら、注入直後に起こります。

12例の失明例のある報告では、全例において、注入後数分以内に視覚障害の兆候が現れました。
その他、早期に起こる症状として、発汗、吐き気、頭痛、眼瞼下垂などがあります。(参考文献>>

その他、眼球運動障害(眼球が動かしにくくなる)により「ものが二重に見える」という症状が生じることもあります。

ヒアルロン酸注入による失明を防ぐポイント

国際美容外科学会(ISAPS)のサイトによると、失明を避けるためには、以下が重要とされています。
・深部への注入を避ける
・人中(鼻の下中央)への注入を避ける
・大量に注入しない
・過去に鼻の手術をしている方は注意
・注入時は圧をかけすぎない
・細い針はリスクが高い

手術歴がある場合は注意

お顔の手術を受けられたことがある方は、血管が手術の影響を受けることもあるため、ヒアルロン酸による塞栓が起こりやすくなることもあるので、注意が必要です。

ヒアルロン酸注入による失明に対する対処法

まず、眼痛が生じた場合は、施術を中止します。

血流不全に陥った網膜を救済するためには、1時間から1.5時間以内に治療しないといけません。
また、失明に対して、眼科医との連携だけではなく、失明例の20%に脳梗塞が起こることもあるため、神経内科・脳外科などとの連携が重要です。
具体的な対処法としては、温める、マッサージ、塞栓が疑われる部位の皮下全体や眼球後部へのヒアルロニダーゼの投与などがあります。
しかし、前述のいずれの報告でも、失明に対してはこれといった確実に有効な治療法が確立されていないというのが現状です。

失明時の対処法について>>

よくあるご質問

熟練した医師でもヒアルロン酸による失明は起こり得るか?

ベテランの医師でもヒアルロン酸により失明が生じたという報告例はあります。(日本形成外科学会総会・学術集会抄録 (61): 224-224, 2018.)

その理由としては、いくら解剖学的な知識があったとしても、血管の走行には変異(個人差)があり、教科書通りではないこともあり得ることなどがあります。

リフトアップの注入剤で失明が起こるものと起こらないものの違いは?

固体・半固体(ジェル状)のものは、血管内を詰まらせることにより失明が起こり得ます。

例としては、ヒアルロン酸以外に脂肪注入、レディエッセなどがあります。

一方、液体の注入剤であれば、血管内に万が一入ったとしてもスーッと流れるので、失明や皮膚壊死を起こすことはありません。

液体のものの例としては、ボトックスやグロースファクターなどがあります。

失明のリスク 注入剤の種類
固体・半固体の注入剤 リスクあり ヒアルロン酸、脂肪注入、レディエッセなど
液体の注入剤 リスクなし ボトックスやグロースファクターなど

注射によるリフトアップ【各治療のメリット・デメリットを比較】

 

失明以外のヒアルロン酸の危険性・リスク・副作用

ヒアルロン酸注入で起こりうる副作用・合併症

早期に起こる副作用・合併症

ヒアルロン酸の入れすぎによるふくらみ
痛み・違和感
内出血
腫れ
アレルギー
注入部位が青白く見える
感染
凹凸
しこり(赤みや痛みなし)
毛細血管の拡張
炎症後色素沈着

後から起こる副作用・合併症

異物肉芽腫・異物反応・遅発性結節

    ヒアルロン酸の副作用の詳細はこちら>>

     

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