酒さは、顔の火照りや、顔の中央部が赤くなる(赤ら顔)特徴があります。
主に中高年の男性に好発し、原因不明の難治性の疾患とされています。
高脂血症やパーキンソン病、またグリオーマなどの腫瘍やリウマチなどの自己免疫疾患の方に酒さ患者が多いと言われています。
欧米と比べ、日本は頻度が低く、重症例も少ないと言われています。
ここでは、「酒さ」の原因・分類、症状や治療法について解説いたします。
その他、ステロイドの使用により起こる「酒さ様皮膚炎」についても触れたいと思います。
原因
遺伝によるものや、ホルモンの過剰分泌、免疫によるものなどがありますが、はっきりとしたことは分かっていません。
以下のようなものが原因として挙げられます。
- 紫外線
- アルコール摂取
- 急な寒暖差・・・寒さで血管が収縮し、暖房などによって血管が拡張され、血流が改善するからです。
また、火照りを抑えるために冷やし過ぎることで、凍傷になる方もいます。 - 毛包虫の悪化
- 性ホルモンの影響
- 洗顔や化粧品の影響
最近では、自然免疫および獲得免疫の活性化は、ニキビダニ種を含む微生物や、表皮ブドウ球菌などの細菌によって引き起こされている可能性があるとされています。
症状
主に頬、鼻、あご、額に生じます。
症状には以下のようなものがあります。
- プツプツとした皮疹や膿を伴った皮疹・・・3~4か月で治まります。しかし、すぐに治療を中断すると、再度症状が出現します。
- 赤ら顔・・・赤ら顔の改善には、少なくとも1年あまりは、皮膚のケアや症状悪化の要因となる環境の見直しを行っていく必要があります。
- 毛細血管の拡張
- ほてり感
- 眼症状
- チクチクとした痛み
- 顔のむくみ
- 肌の乾燥
※鼻の変形や粉瘤がみられることもあります。
※洗顔のしすぎによる刺激性接触皮膚炎の症状がないかを確認します。
※保湿剤の過度な使用によって、オイリー肌がみられることもあります。
※ニキビのような炎症がみられる酒さでは、月経周期に伴って症状が強まったり弱まったりすることがあります。
酒さの分類
酒さは以下の4つに分類されます。
- 第1度酒さ(紅斑毛細血管拡張型)・・・赤ら顔
- 第2度酒さ(丘疹膿疱型)・・・ニキビ様の皮疹
- 第3度酒さ(腫瘤型)・・・鼻の毛穴の開き、凸凹
- 第4度酒さ(眼型)・・・目の周囲の腫れ、結膜の充血
検査
酒さが疑われる赤ら顔の方には、訴えや症状に応じて、以下のような検査を行っていきます。
- パッチテスト
- 血液検査(アレルギー検査)
- 真菌検鏡(顕微鏡を用いて、皮膚内のカビの有無を調べます。)
- 紫外線照射試験
- 皮膚生検と皮膚病理検査(皮膚の一部を切り取り、組織を調べます。)
治療法
薬による治療
- 抗生物質
- 免疫抑制剤
- アレルギー抑制剤
- イオウ・カンフルローション・・・ニキビの治療に用いられる塗り薬です。酒さの保険適用あり、毛包虫に対して効果があります。
- 美白剤
レーザーなどの照射治療
赤い色に反応する照射治療は、赤ら顔に有効です。
パルス色素レーザー
酒さに対しては、自由診療扱いとなります。
IPL・フォトフェイシャル
広い範囲に有効であり、パルス色素レーザーと同じレベルの効果が期待できます。
イオン導入
微弱な電流を流すことで保湿され、赤みを軽減する効果があります。
週に1回の治療をおすすめします。
丘疹膿疱型の酒さで、顔ダニと言われるにきびを合併している方は、イオン導入とケミカルピーリングを併用すると、より効果的とされています。
予防法
症状悪化の要因となるものは、日常生活の中にあります。
生活上で気を付けるべきポイントは、以下になります。
ストレス管理
ストレスは酒さの悪化の原因となります。
保湿を中心としたスキンケア
・乾燥肌の場合は、洗顔の回数を調節します。
・脂性肌の場合は、過剰な保湿は控えます。
・スキンケア用品は低刺激のものを使用します。
遮光対策・紫外線予防
・日焼け止めの使用(SPF30以上)
・帽子や日傘など物理的な遮光対策
カーテン:日差しが部屋の中へ進入することを防ぎます。
帽子:つばが大きいタイプが良いでしょう。
日傘:黒であれば紫外線加工を施していなくても100%の遮光効果があります。
しかし、白いタイプは紫外線加工を施していないと15~30%の紫外線が透過するため、紫外線加工が施された透過0%のものを使用すると良いでしょう。
冷やさない
火照り感の改善のために、アイスノンなどで顔を冷やさないように心がけましょう。
冷やすことで血流が悪くなり、血流を良くしようと火照り感や赤ら顔が起こります。
温まることよりも、冷えることのほうが症状悪化の原因となります。
ヒルドイド/ヘパリン類似物の使用を控える
ヘパリン類似物質を長期使用することで毛細の血管拡張がみられるため、注意する必要があります。
血行促進作用があるヒルドイドやビーソフテンなどは、紅斑毛細血管拡張症・第1度酒さ・赤ら顔の方への使用はお勧めしません。
食事についての注意点
食事制限の必要はありません。
飲酒や辛い食べ物は、血流が良くなることで一時的に赤ら顔を増強させますが、酒さの炎症反応を誘発するものではありません。
酒さ様皮膚炎
原因
ステロイド薬や免疫抑制剤の使用により酒さ様が起こることがあります。
特徴
酒さ様皮膚炎では、顔ダニによるニキビを合併することも多いとされています。
治療
ステロイドの服用を中止し、基礎疾患の治療を行います。
※ステロイドの服用を中止することで、2週間前後の一時的な増悪が見られることがあります。
参考文献
今日の治療指針 2022年版. 医学書院. 2022
N Engl J Med. 2017 Nov 2;377(18):1754-1764.