トレチノインやハイドロキノンは、美容においてメリットの多いシミ・くすみの治療薬として知られています。
効果が高まるので併用することがありますが、選び方や使用方法を間違えている場合も多いので注意が必要です。
実は、正しく使用しなければ、きれいになるどころか、皮膚に悪影響を及ぼすこともあります。
今回は、トレチノインとハイドロキノンの効果や副作用、併用することによるメリット、使用方法などについてわかりやすく説明します。
トレチノインについて
効果
肌のターンオーバーを促進
皮膚は、定期的に古い細胞が新しい細胞と入れ替わっており、古い細胞は垢や古い角質として剥がれ落ちます。このように一定のサイクルで皮膚が生まれ変わることをターンオーバーと呼びます。
ターンオーバーのサイクルの乱れは、肌荒れやニキビなどの皮膚トラブルの原因になります。
トレチノインには、ターンオーバーを促進する作用があり、健康な細胞を作ります。
ターンオーバーを促進するので、皮膚の修復力が高くなったり、皮膚のキメが整って毛穴が目立たなくなります。
紫外線を吸収して皮膚を守る
トレチノインは紫外線を吸収するので、皮膚を守る作用もあります。
ニキビや小ジワ、シミに効果がある
症状別に見てみると、トレチノインはニキビや小ジワ、シミなどに効果があるといわれています。
具体的には、毛穴のつまりが改善されるので、ニキビが良くなります。
皮膚のハリに関わるコラーゲンやヒアルロン酸が増えるので、皮膚のハリが出て、小ジワが改善されます。
トレチノインとハイドロキノンを併用すれば、シミやくすみが改善します。(詳細は後述)
副作用
どの治療薬もそうであるように、トレチノインにも副作用があります。
トレチノインの副作用としては、炎症症状であるレチノイド反応や炎症による色素沈着が挙げられます。
日焼けしやすくなるという症状が見られることもあります。
副作用を防ぐためには、用法容量を守り、皮膚に異常を感じたらすぐに医師に相談することが大切です。
ハイドロキノンについて
効果
メラニンの生成を抑える
ハイドロキノンを皮膚に塗ると、メラニンの生成を抑えるのでシミを改善することができます。
ただし、シミにもさまざまな種類があり、ハイドロキノンの効果が出やすいものと出にくいものがあります。
例えば、肝斑や炎症後色素沈着にはハイドロキノンの効果が出やすいといわれていますが、老人性色素斑やそばかすには効果が出にくいです。
また、ほくろや盛り上がったシミなどには効果がありません。
ハイドロキノンの効果を期待できるシミかどうかは、医師によって判断する必要があります。
ハイドロキノンの塗り薬による治療効果が出るまでには、平均1~3か月かかります。
シミの原因になるメラニンという言葉を聞いたことがある人も多いかもしれません。
メラニンは、皮膚や髪の毛、瞳の色に影響する色素のことです。
メラニンが多く含まれると、黒く見えます。
シミの原因になるのでメラニンは悪者のように考えてしまうかもしれませんが、本来は紫外線から皮膚の細胞を守るという役割があります。
紫外線を浴びると、皮膚への悪影響を防ぐためにメラニンが生成されます。
ただし、メラニンが過剰に作られてしまうとシミの原因になります。
また、皮膚のターンオーバーの乱れによって皮膚にメラニンが留まってしまうとシミになることがわかっています。
副作用
皮膚の赤みやピリピリとした痛み、白抜け、色素沈着、外因性組織黒変症など
ハイドロキノンの副作用としては、皮膚の赤みやピリピリとした痛み、白抜け、色素沈着、外因性組織黒変症などが知られています。
ハイドロキノンによる皮膚の赤みやピリピリとした痛みなどは、薬の刺激による皮膚の炎症症状と考えられます。
2週間程度すれば改善することが多いです。
高濃度のハイドロキノンを使用した場合に起こりやすい副作用
高濃度のハイドロキノンを使用した場合に起こりやすい副作用として、皮膚が一部分が白くなる白抜けというものがあります。
メラニンを生成する細胞に対して、ハイドロキノンの作用が強く出てしまった場合に起こりやすいです。
また、高濃度のハイドロキノンを長期に使用した場合やレゾルシノール、フェノールなどと併用した場合、日焼けした場合などに指や爪、手足などに色素沈着が起きることがありますが、ハイドロキノンの使用をやめると回復するといわれています。
ハイドロキノンを長期にわたって使用した場合の副作用
他にも、ハイドロキノンを長期にわたって使用することによって、皮膚炎や色素沈着などが報告されています。
このような副作用が起きないように、ハイドロキノンの慢性的な使用は避け、1年以内に中止することが推奨されています。(特に長時間の塗布と日光に当たりすぎることがリスクとなります。)
ハイドロキノンを再開するかどうかは、医師と相談しましょう。
ハイドロキノンの副作用を防ぐためには、用法容量を守り、皮膚に異常を感じたらすぐに医師の診察を受けることが大切です。
トレチノインとハイドロキノンを併用することによるメリット
併用すると治療効果を高められる
ハイドロキノン単独による治療よりも、トレチノインとハイドロキノンを併用すると治療効果を高められるというメリットがあります。
トレチノインは皮膚のターンオーバーを促進するので、新しく生まれ変わった皮膚をハイドロキノンによって白くすることができるからです。
ピーリング剤を併用するとさらなる治療効果を期待できる
また、サリチル酸やグリコール酸などのピーリング剤を併用するとハイドロキノンやトレチノインの浸透を高めるので、さらなる治療効果を期待できます。
単独で使用するか、併用するかどうかは医師の診察を受けて決めた方が安心です。
皮膚科では、ハイドロキノン単独による治療を行うことも多いです。
ハイドロキノン単独による治療が行われる理由として、一般的なトレチノインは1か月程度で劣化してしまうので管理が難しいことや皮膚炎などの副作用を起こしやすいので治療継続が難しいことなどが挙げられます。
しかし、ハイドロキノン単独による治療では、効果を得るのに時間がかかります。
トレチノインとハイドロキノンを使用する前に注意すべきポイント8つ
トレチノインとハイドロキノンは正しく使用すれば、高い治療効果を実感できます。
しかし、用法容量を守らなかったり、使用上の注意点を理解していないと副作用が出て、皮膚に悪影響を及ぼすこともあります。
トレチノインとハイドロキノンを使用する前に注意すべきポイントは以下のようなものです。
1.医師の診察を受ける
トレチノインやハイドロキノンは、市販薬を入手することも可能です。
しかし、自己判断で使用すると効果が得られないばかりか、副作用が起きることがあります。
例えば、シミだと思っていたら、皮膚がんだったという場合もあります。トレチノインやハイドロキノンは医師の診察を受けてから使用した方が安心です。
2.用法容量を守る
どのような薬にも言えることですが、多く使用すれば高い治療効果を得られるわけではありません。
決められた使用量、使用方法を守らないと副作用が起きる可能性が高くなります。
ハイドロキノンを重ね塗りしたり、漫然と使用することは避けた方がよいです。
副作用のリスクを下げるため、洗顔後にタオルでやさしく拭いて20~30分経ったら塗るようにしましょう。
また、塗り薬のハイドロキノンの35~45%は皮膚から吸収されるといわれているので妊娠中は使用を避けた方がよいと考えられています。
皮膚の赤みやピリピリとした痛みなど、皮膚の異常を感じたらすぐに医師に相談するようにしましょう。
3.正しく保管する
ハイドロキノンは、酸素や熱で性質が変わりやすくなるので、密封した状態で冷蔵庫に保存した方がよいです。
使用期限は必ず守り、使用期限内でも色が変わったりした場合には使用しないようにしましょう。
保管状態が悪く、性質が変わってしまうと、皮膚への刺激が出やすくなります。
また、トレチノインも光や熱、湿気、空気などに弱く、劣化しやすいといわれています。
トレチノインも冷蔵庫や引き出しなどに保管するようにしましょう。
製品によっては、常温保存できるものもあるので、保存方法を確認するようにしてください。
4.日焼けしないように心がける
日焼けは、シミだけでなく、シワやたるみの原因になります。
シミの治療中に日焼けをしてしまうと、なかなか治療効果を得られないことがあります。
帽子や日傘、日焼け止めを使用し、日焼けをしないように心がけましょう。
5.試し塗りをしてから使用する
どのような薬でも、アレルギー反応や炎症症状が出ることがあります。
ハイドロキノンやトレチノインを初めて使用する時には、顔全体に塗らずに部分的に塗って、皮膚に異常が出ないかどうか確かめるとよいです。
6.市販薬に注意する
ハイドロキノンやトレチノインは、市販薬でも入手が可能です。
中には、個人輸入したものが販売されています。
海外の製品は日本人向けでないことも多く、成分が適切かどうかの保障もないので注意が必要です。
医師が処方したものであれば、副作用などが起きた時もすぐに診察を受けられるので安心です。
7.毎日のスキンケアも大切にする
トレチノインを使用している時には、皮膚がいつもより敏感になります。少しの皮膚の摩擦でも、皮膚の黒ずみや肌荒れ、乾燥などが起きることがあります。
顔を洗う、メイクをする、日焼け止めを塗る、メイクを落とす、タオルで拭く時などに、皮膚をこすらないように心がけましょう。
また、トレチノインの副作用で皮膚が乾燥することがあるので、1日数回保湿クリームを塗るとよいです。
8.トレチノインと類似の作用を持つ薬剤に注意する
トレチノインと似たような作用を持つアダパレンやレチノールなどとトレチノインを併用すると、副作用が強く出ることがあるので注意が必要です。
トレチノインを使用する場合には、トレチノインと類似の作用を持つ薬剤を中止後2週間以上経ってからにした方がよいです。
9.目的に合ったトレチノイン製剤を選ぶ
トレチノイン製剤には、トレチノイン単独とハイドロキノンを別々に塗る製品とハイドロキノンが最初から配合されている製品があります。
前者で代表的なものは、東大式のトレチノインで、純粋なトレチノインが水溶性のゲルに混ぜられています。
後者の代表的なものは、メラフェードです。
東大式のトレチノインについて
東大式のトレチノインは、効果が強いものの副作用も出やすいので、1~2週間に1回程度は医師の診察を受けることが推奨されています。
メラフェードについて
メラフェードは、効果はマイルドですが副作用が出にくいといわれています。
製品による濃度の違いについて
また、薬剤の濃度もさまざまで、東大式のトレチノインは0.1%、0.2%、0.4%の3種類があります。
濃度が高い方が効果は出やすいですが、副作用も出やすくなります。
メラフェードは0.1%のみですが、症状や副作用などを見ながら濃度が変えられるように、ヒアルロン酸の希釈剤がついています。
その他のトレチノイン製品のなかには、0.05%や0.025%などの濃度に設定したものもあります。
保存期間について
保存期間や管理の仕方も、製品によって違います。
例えばメラフェードは、常温での保存が可能で、保存期間も長いという特徴があります。
皮膚科で出される一般的なトレチノインは、1か月程度で劣化が起ことと、皮膚炎などの副作用を起こしやすいため、治療中に挫折する例が多く見られます。
皮膚の状態を見ながら、自分の目的に合った使用しやすい製品を選ぶことが大切です。
参考文献:
Plast Reconstr Surg. 2000 Mar;105(3):1097-108; discussion 1109-10.
Aesthetic Plast Surg. Jul-Aug 1999;23(4):285-91.
まとめ
トレチノインとハイドロキノンの効果や副作用、併用によるメリット、使用時の注意点などについてまとめました。
トレチノインとハイドロキノンは単独で使用する方法もありますが、併用することによってより高い治療効果が期待できます。
ただし、医師の診察を受けてから、適切な治療薬を選んだ方が安心です。
自分でシミと判断していたら違う病気であったり、薬による副作用が起きることがあるからです。
トレチノインとハイドロキノンの併用薬でも、それぞれの製品に特徴があるのでよく理解し、自分に合った製品を用法容量を守って使いましょう。
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